「社会人のための英語回路構築トレーニング自習帖」著者のブログ

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アポストロフィーをつけるべきか、つけざるべきか それが問題だ

(4)アポストロフィーをつけるべきか、つけざるべきか それが問題だ

アメリカの2月第3月曜日は「大統領の日」です。

大統領の日とは、ジョージ・ワシントンとエイブラハム・リンカーンという2人の大統領の誕生日を合わせたものです。この連邦祝日は、正式な名称を「ワシントン誕生日(Washington’s Birthday)」といい、2月の第3月曜日に祝います。この日を米国の歴代大統領全員を称える日と考える人たちもいるようです。

さて、この「大統領の日」は英語では「Presidents’ Day」でしょうか?それとも「Presidents Day」でしょうか?

ネットで調べてみると、両方ありました。

「大統領達の」ですから「Presidents’」とするのが「文法的」には正しいように思いますが、名詞の前の名詞は形容詞の役割を果たすので「Presidents Day」もOKの気もします。デパートの「婦人服」売場では「Ladies Wear」という表記がよく見られます。多分、この方が「見た目」が綺麗に見えるからだと思います。

「英語の歴史から考える 英文法の『なぜ』」(朝尾幸次郎 大修館書店)に、イギリスのケンブリッジ市で道路標識にアポストロフィーをつけるべきか、つけざるべきかの大論争があり、結局「つける」に落ち着いたという話が紹介されていました。「文法的」にはアポストロフィーをつけ「所有格」であることを明示する形になったようです。

英語の聞き取りを難しくしている1つの要因

(3)英語の聞き取りを難しくしている1つの要因

前回「他言語話者との接触が進み、他言語話者が多くその言語を使うようになると、一般に複雑な変化が失われる傾向にあります。英語の場合はヴァイキングの侵略による北欧語との接触とノルマン・コンクエスト(1066年)によるノルマン・フランス語との接触が消失を促進したといえます」と書きました。

英単語の歴史というものは基本的にはハッキリしています。英和辞書の中には「語源」を明示しているものもあります。極めて大雑把に言えば、ノルマン・コンクエスト(1066年)以前の「古英語」と、ノルマン・コンクエスト以降のラテン語系の言葉があります。「古英語」は「普段よく使われ」「単語自体が短い」という特徴があります。ラテン語系の言葉はノルマン・コンクエスト以降、イギリスの朝廷で使われ始めたという歴史があり、庶民には余り縁がなかったのです。「英語の歴史から考える 英文法の『なぜ』」(朝尾幸次郎 大修館書店)によれば「英語で最もよく使われる単語500語を見ると、短音節語は400語、なんと8割にのぼります」。音節というのは人が聞いた時「1つの音」として認識する音の最小単位です。日本語でいえば「50音」です。例えば「street」は1音節、「ストリート」は4音節です。この音節が沢山あるほど単語自身の難しさは別にして、知っている単語ならば「聞き取り」は易しくなります。1つの音節が聞き取れなくても、聞き取れた音節から類推できるからです。「street」は、この1音節が聞きとれなければ全く分かりません。しかし、「ストリート」の場合「ス リート」が聞き取れれば「ストリート」と類推できます。

前回書いたように、古英語では語尾変化が沢山あった結果、結果として音節は今より多かったのです。例えば「come」の語源は古英語の「cuman」です。前者は1音節、後者は2音節です。

我々が英語の聞き取りが苦手な理由は単語の長さだけではありませんが、1つの要因ではあります。

「てにをは」はどこにある

(2)「てにをは」はどこにある

日本語はある言葉に「は」「が」「を」「に」等の助詞をつけることによってその言葉の文法的な働きが決まります。現代英語では、この助詞にあたるものはなく、語順によってその働きを決めることは良く知られています。「私はあなたを愛しています」は「I love you.」以外の語順はありません。日本語では「愛しています あなたを 私は」も可能です。

ノルマン人が西暦1066年に England を征服し(ノルマン・コンクエスト)、ノルマン語・フランス語がそれまでの英語に多大の影響を与えたため、西暦449年から1100年頃までの英語を「古英語」と言いますが、古英語では今の英語の語順よりも遥かに語順に関しては自由度があったようです。それは古英語では「語形変化または屈折(inflection)」したからです。この語形変化または屈折が言葉の文法的な働き(現在の主格、所有格、目的格、単数・複数等)を決めてくれたからです。

語形変化または屈折とは,名詞,代名詞,形容詞,冠詞,動詞などが,文中での文法的役割に応じて語形(特に語尾)を変化させることです.射し込む光が対象に応じて様々に屈折するように,語尾等が文法的役割に応じて様々に折れ曲がる,というイメージです.日本語でいえば,動詞や形容詞の「活用」に近いものと想像してください。

例えば、古英語の名詞・代名詞・冠詞・形容詞には次のような格がありました。「王様(cyning)」(発音はキュニング)では
主格(・・・は、が)⇒cyning(単数)、cyningas(複数)
対格(・・・を)⇒cyning(単数)、cyningas(複数)
属格(・・・の)⇒cyninges(単数)、cyninga(複数)
与格(・・・に)⇒cyninge(単数)、cyningum(複数)
現代英語では名詞の主格と目的格は同じ形をしていますが、この古英語の法則が引き継がれているのでしょう。現在の「SVOO」文型では両方の「O」は同じ形をしていますが、昔は形が変わっていたので「語順」も今より自由度があったことが推測されます。

現代英語では名詞の複数形には通常「-s」または「-es」をつけますが、これは上記の「-as」に由来します。brother/brethren, child/children, ox/oxen のように「-en」を付ける名詞もありますが、これも古英語の複数形を作る1つのパターンでした。man/men, foot/feet, goose/geese, tooth/teeth は古英語の複数形を作る1つのパターン+発音変化の結果です。

「days and nights」は「昼も夜も」の意ですが、この「days」も「nights」も名詞に「s」を付けて複数形にしたように見えますが、実は上記の属格の名残です。古英語の属格には副詞用法があったのです。weekends, Saturdays も「繰り返し」のイメージの時には副詞として使えます。He meets his girlfriend Saturdays.

現代英語では「king’s」のように、所有格に「アポストロフィー(元来は省略の意)」をつけますが、所有格にあたる古英語の属格には「アポストロフィー」をつけるというやり方はありませんでした。「アポストロフィー」を使うようになったのは18世紀に入ってからのようです(フランス語の影響)。ですから、シェイクスピア(1564-1616)は「Times foole (= Time’s fool)<時の道化>」のように属格と同じアポストロフィーなしで使っています。

屈折語では時代が下るとともに屈折的特徴が失われます。屈折の消失が進んでいる例として現代英語が挙げられます。英語ではインド・ヨーロッパ語族の特徴である動詞の屈折語尾はほとんど失われ、直説法能動態現在単数三人称に‐sがつくのみ、名詞では格の区別が語の上から失われ、形の上では基本形(主格、目的格にあたる部分)と所有を表す 「's 」を伴う形の二つに収斂しています。このような語形変化の消失には大きく二つの原因が挙げられます。
1つは他言語との接触による簡略化です。他言語話者との接触が進み、他言語話者が多くその言語を使うようになると、一般に複雑な変化が失われる傾向にあります。英語の場合はヴァイキングの侵略による北欧語との接触とノルマン・コンクエスト(1066年)によるノルマン・フランス語との接触が消失を促進したといえます。別の原因は音韻の変化による語形の消失です。母音の融合や子音の脱落などにより、元あった差異が失われ語形が減少しました。

現代のドイツ語、フランス語、スペイン語等には男性名詞、女性名詞、中性名詞があり、それに伴い冠詞も変えなくてはなりません。古英語では wife の語源である wif(女)は中性名詞でした。現代英語ではこれは完全に消滅しました。

昔、娘がまだ大学生だった時に「主格、対格、属格、与格」の質問を受け、全く答えられませんでした。現代英語の本質を理解するのに欠くことのできない知識であることを再認識しました。

日本語はある言葉に「は」「が」「を」「に」等の助詞をつけることによってその言葉の文法的な働きが決まります。現代英語では、この助詞にあたるものはなく、語順によってその働きを決めることは良く知られています。「私はあなたを愛しています」は「I love you.」以外の語順はありません。日本語では「愛しています あなたを 私は」も可能です。

ノルマン人が西暦1066年に England を征服し(ノルマン・コンクエスト)、ノルマン語・フランス語がそれまでの英語に多大の影響を与えたため、西暦449年から1100年頃までの英語を「古英語」と言いますが、古英語では今の英語の語順よりも遥かに語順に関しては自由度があったようです。それは古英語では「語形変化または屈折(inflection)」したからです。この語形変化または屈折が言葉の文法的な働き(現在の主格、所有格、目的格、単数・複数等)を決めてくれたからです。

語形変化または屈折とは,名詞,代名詞,形容詞,冠詞,動詞などが,文中での文法的役割に応じて語形(特に語尾)を変化させることです.射し込む光が対象に応じて様々に屈折するように,語尾等が文法的役割に応じて様々に折れ曲がる,というイメージです.日本語でいえば,動詞や形容詞の「活用」に近いものと想像してください。

例えば、古英語の名詞・代名詞・冠詞・形容詞には次のような格がありました。「王様(cyning)」(発音はキュニング)では
主格(・・・は、が)⇒cyning(単数)、cyningas(複数)
対格(・・・を)⇒cyning(単数)、cyningas(複数)
属格(・・・の)⇒cyninges(単数)、cyninga(複数)
与格(・・・に)⇒cyninge(単数)、cyningum(複数)
現代英語では名詞の主格と目的格は同じ形をしていますが、この古英語の法則が引き継がれているのでしょう。現在の「SVOO」文型では両方の「O」は同じ形をしていますが、昔は形が変わっていたので「語順」も今より自由度があったことが推測されます。

現代英語では名詞の複数形には通常「-s」または「-es」をつけますが、これは上記の「-as」に由来します。brother/brethren, child/children, ox/oxen のように「-en」を付ける名詞もありますが、これも古英語の複数形を作る1つのパターンでした。man/men, foot/feet, goose/geese, tooth/teeth は古英語の複数形を作る1つのパターン+発音変化の結果です。

「days and nights」は「昼も夜も」の意ですが、この「days」も「nights」も名詞に「s」を付けて複数形にしたように見えますが、実は上記の属格の名残です。古英語の属格には副詞用法があったのです。weekends, Saturdays も「繰り返し」のイメージの時には副詞として使えます。He meets his girlfriend Saturdays.

現代英語では「king’s」のように、所有格に「アポストロフィー(元来は省略の意)」をつけますが、所有格にあたる古英語の属格には「アポストロフィー」をつけるというやり方はありませんでした。「アポストロフィー」を使うようになったのは18世紀に入ってからのようです(フランス語の影響)。ですから、シェイクスピア(1564-1616)は「Times foole (= Time’s fool)<時の道化>」のように属格と同じアポストロフィーなしで使っています。

屈折語では時代が下るとともに屈折的特徴が失われます。屈折の消失が進んでいる例として現代英語が挙げられます。英語ではインド・ヨーロッパ語族の特徴である動詞の屈折語尾はほとんど失われ、直説法能動態現在単数三人称に‐sがつくのみ、名詞では格の区別が語の上から失われ、形の上では基本形(主格、目的格にあたる部分)と所有を表す 「's 」を伴う形の二つに収斂しています。このような語形変化の消失には大きく二つの原因が挙げられます。
1つは他言語との接触による簡略化です。他言語話者との接触が進み、他言語話者が多くその言語を使うようになると、一般に複雑な変化が失われる傾向にあります。英語の場合はヴァイキングの侵略による北欧語との接触とノルマン・コンクエスト(1066年)によるノルマン・フランス語との接触が消失を促進したといえます。別の原因は音韻の変化による語形の消失です。母音の融合や子音の脱落などにより、元あった差異が失われ語形が減少しました。

現代のドイツ語、フランス語、スペイン語等には男性名詞、女性名詞、中性名詞があり、それに伴い冠詞も変えなくてはなりません。古英語では wife の語源である wif(女)は中性名詞でした。現代英語ではこれは完全に消滅しました。

昔、娘がまだ大学生だった時に「主格、対格、属格、与格」の質問を受け、全く答えられませんでした。現代英語の本質を理解するのに欠くことのできない知識であることを再認識しました。
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