(23)「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。」と「列車は、国境に横たわる長いトンネルを通り抜けて、雪国へと出てきた。」

これは川端康成の『雪国』の冒頭の場面で、後者はサイデンスッテカー氏による英訳を日本語にそのまま置きなおしたものです。

私も昔、勉強を兼ねて英語でも読みましたが面白くなかった記憶があります。川端康成の『雪国』の冒頭の場面は主観的・臨場的・体験的なのに対して、英訳は客観的です。ここまでくると言語間のどうしても乗り越えられない壁を感ぜざるを得ません。逆にサイデンスッテカー氏をもってしても、ここまでしか出来ないという妙な安心感もあります(英語を母語とする人々が氏の英訳から、どんな感じで受け取るのかは私には不明ですが、多分客観的な状況しか思い浮かばないものと思われます)。我々日本人は「客観的な絵が伝われば、それでよし」と割り切るべきでしょう。