先日まで取り上げていた Kazuo Ishiguro の When We Were Orphans の最初の出足は
『It was the summer of 1923, the summer I came down from Cambridge, when despite my aunt’s wishes that I return to Shropshire, I decided my future lay in the capital and took up a small flat at Number 14b Bedford Gardens in Kensington. 』です。この文は「それは1923年の夏だった、・・・したのは」の構文で、日本語で考えると何の違和感もありません。しかし、この「It」は「when」で受けられており、「when」は「副詞節」を導くと学校では習いました。TOEIC対策でも「when」で始まる疑問文では時を表す「in, on, at」で始まる選択肢を選べと書いてあったように思います。そうすると「It was the summer of 1923」ではなくて「It was in the summer of 1923」と「in」が必要なのではないかと思ってしまいます。しかしノーベル文学賞を受賞した作家の文です。ということは「正しい」文だということです。

「ジーニアス英和大辞典」の「spring」のところに『They met in the spring of 2001. では in が必要であるが、(米略式)ではしばしば省略する。ただし、単に We met the spring. では不可』という記述がありました。「We met the spring.」は「我々は 会った その春に・を」の意味になるので「不可」であることは全く疑問の余地がありません(但し、著者が英語を教えていて、このように、必要な前置詞が欠如した英文を書く生徒さんは結構大勢おられます。動詞の直後に前置詞がない場合はその動詞が自動詞になると覚えるとよいでしょう)。更に読み進めてみると『副詞的に「今年の春」というときは「in this spring」は不可で「this spring」としなければならない』と書いてあります。ノーベル文学賞受賞作家の文は「正しい」文だったのです。

同じ「spring」でも「the spring」は名詞で「this spring」が「副詞」になるのは何故?
これは「言語習慣」としか言いようがないと思います。敢えて理屈を与えるとすると「今年の春」を名詞に使って「This spring was warm.」とすることは出来るが『「時を表す主語」は通常「it」が使われるので「It was warm this spring.とする』ので「in this spring」の「in」が省略されていったものと考えます。「tomorrow/yesterday morning」も「副詞」として使う時は前置詞不要です。「9時に起きた」は「I got up at 9 a.m.」ですが(「I got up 9 a.m.」は「9 a.m.起こした」の意になります)、「私が起きたのは9時だった」は「It was 9 a.m. that I got up.」。

ここで思いついたのが「名詞節を導く接続詞thatが前置詞の目的語になると、前置詞が省略される」というルールです(「I’m sure of his success.」 はOKだが「I’m sure of that he will succeed.」は不可で「I’m sure (that) he will succeed.」としなければなりません)。「that he will succeed」は「文法」的には名詞節ですので「of」の目的語になりそうですがダメです。これも「言語習慣」としかいいようがありません。