「as I say」

「as I say」を文字通り日本語に訳せば「私が(いつも)言うように」になります。ジーニアス英和大辞典の成句欄には「as I say」は取り上げられていませんが、「as they say」は一般に言われるように」、「as you say」には「そう言うのならそうでしょう」の訳語が当てられています。

しかし、Kazuo Ishiguro の When We Were Orphans の中では度々出てきますが「先ほども言ったように」の日本語が当てはまります。「先ほども言ったように」を Google 翻訳させると「as I said earlier」と出てきます。これは「earlier(現在時刻より前に)」という「過去の時」を表す副詞を使っていますので「said」という過去形が使われるのは極めて当然です。

それでは「as I say」と「as I said earlier」が「先ほども言ったように」の意味で使われる場合のニュアンスの違いは何でしょうか。

前者は「単純現在形」を使っていますので話者の頭の中の絵(イメージ)は「現在」のハズです。頭の中の絵(イメージ)が「現在」ということは「現時点でもその動詞の動作の結果は有効である」という意識のハズです。「We have entered into the agreement.」が「その合意は今も有効である」ことを含意するのと同じです。ですから「as I say」には「先ほど言ったことは今この時点でも有効ですが」のニュアンスが含まれていると考えられます。「私がいつも言うように」を文字通りに言うなら「as I always say」と副詞が入ります。「動作を表す動詞が現在形で使われている場合は『習慣』を表す」という「文法」を意識しすぎると、誤解することがあるという一例でしょうか。

一方「as I said earlier」は単に「過去の1つの動作を述べている」だけです。「We entered into the agreement.」なら、現在はもう破棄されているかも知れません。即ち「過去の事実」を述べているにすぎないということです。