「quite」

「quite」は結構やっかいな言葉です。「全く」の意になることもあり「かなり」の意のこともあり、或いは「quite a few」のように「かなり多数の」の意の成句として覚えなくてはなりませんでした。今日は下記の下線部に(出典はKazuo Ishiguro: When We Were Orphans)「根本的に」対処すべく、徒然なるままに取り組んでみましょう。

A magnifying glass may not be quite the crucial piece of equipment of popular myth, but it remains a useful tool for the gathering of certain sorts of evidence, and I fancy I will, for some time yet, carry about with me my birthday gift from Robert Thornton-Browne and Russell Stanton.
ジーニアス英和大辞典には詳しく解説してありました。

1.<wrong, perfect など絶対またはそれに近い概念を表す非段階的形容詞・副詞・動詞などを修飾して;修飾する語(句)に強勢を置いて>まったく、完全に、すっかり(completely, entirely)
⇒「絶対またはそれに近い概念を表す」とは、比較することができない二者択一(是か非か)的なニュアンスを持つ強いニュアンスを持つ語のことでしょうから、形で見定めるなら「比較級」がない言葉だと推測されます。例えばfull, perfect, true, wrongなど。emptyは形としては比較級・最上級はありますが「通例比較変化なし」と注がついています。上記の「crucial」は「more crucial」「most crucial」と変化しますので、ジーニアス英和大辞典に従えば非段階的形容詞ではなさそうです。しかし「the」がついていているので修飾する語に強勢を置いて発音される可能性は大であることを留保して次に進みましょう。

2.<good, rich など程度を表す段階的な形容詞・副詞・動詞などを修飾して;通例否定文では用いられない>
a. <主に英・米略式>(quiteに強勢を置いて)かなり、なかなか(fairly);
まあまあ、ほどほどに、多少(more or less)
b. (quiteの次に来る語に強勢を置いて)非常に、とても。米ではこの意味で用いるのが普通。英ではしばしば控え目な表現として用いられる。「実際に、本当に(actually, truly)」
⇒しかしアメリカでは「非常に、とても」は「quite」でなくて「very」を使うことが多いとおもいます。

3.「quite (so)」で「まったくその通り」⇒この使い方

4.事実上、ほとんど、・・・も同然。He is quite a grown-up. (もうおとなだといってよい)

上記3はカテゴリーとしては1に属し、4は名詞を修飾していて或る意味で「特殊」な使い方ですので1と2をザックリ纏めるならば『書き言葉ではどこに強勢を置くか分からないので究極的には文脈でしか quite の意味は分からない』『しかし、「非段階的形容詞・副詞・動詞」を修飾する場合にはcompletely, entirely の意味になる。段階的な形容詞・副詞・動詞などを修飾する場合は「fairly」または「actually, truly」の意味になる』『アメリカ英語とイギリス英語で使い方に特徴があるのでそれも考慮する必要がある』

上記によれば、この2の使い方は「通例否定文では用いられない」とありますので、「quite the crucial piece」は例外的な使い方なのか、或いは「crucial」は「more crucial」「most crucial」と変化するものの Ishiguroは「非段階的形容詞」として捉えているかのどちらかになります(彼は「非段階的形容詞」なるものの概念は持ち合わせていないと思いますが)。ここでは文脈からは「非段階的形容詞」として分類できる形容詞と考えて「entirely」で置き直せそうです。

次に「quite the crucial piece」の語順については同上の辞書によればこの語順が「正式」。[a]の場合もこの語順の方が多いようですが「a quite …」もあり得るようです。例えば「a quite unique view of language(全く異なる言語観)」。本当にややこしい!!

「quite few」は「たいへん少ない」の意ですが「quite a few」は「かなり多数の」意になります。これは「a few」は「少しはある」のイメージで「quite」はこの「ある」のイメージが強調されたものと解説は出来ますが、本当のところは「言語習慣」でしょう。