英文法の「なぜ」

(1)英語を English というのは何故か

著者は今「英語の歴史から考える 英文法の『なぜ』」(朝尾幸次郎 大修館書店)を読んでいます。今まで英語の歴史に関する書物を何冊か読みましたが、ほとんどが著者には難しすぎました。この本なら何とかついていけそうです。面白いと思ったものを、著者なりに理解した上で、随時紹介して行きたいと思います。

<ブリテン島の攻防>
紀元前ブリテン島(現在のイングランド、スコットランド、ウエールズのある島)の南部に住んでいたのはケルト(Celt)系の1民族であるブリトン人(Britons)でした。ブリテン島(Britain)という名前は彼らに由来します。アメリカ英語などに対して「イギリス英語」という場合は「British English」と言いますが、「British」は「Brit-(ブリトン人)」+「-ish(国籍・人種などを示して)・・・の」が語源です。

前1世紀に、あの有名なローマのカエサルが遠征。紀元43年にローマの属州とされますが、強大な力を誇ったローマもゲルマン人の大移動の波を受け、イタリア本土の防衛に専念せざるを得なくなり、紀元409年に属州ブリタニアから撤退しました。

これと入れ替わるようにブリテン島に侵入したのがゲルマンでした。ゲルマンというのはヨーロッパ北方に住んでいた人々の総称で、現在のノルウエー人、スウェーデン人、デンマーク人、ドイツ人、オランダ人の祖先にあたります。彼らは西暦449年に海を渡ってブリテン島を襲います。ブリテン島に侵入したのはアングル(Angles)、サクソン(Saxons)、ジュート(Jutes)と呼ばれる部族でした。彼らの話した言葉が英語の祖先になります。この西暦449年が英語の起源です。日本では古墳時代です。

圧迫されたブリトン人は島の辺境に追いやられ、さらに海峡を越えて現フランスに至り、その地がブリトン人の地(フランス語でブルターニュ)といわれるようになると、その地と区別して、この島の方を大ブリテン(グレート・ブリテン)と言うようになったという経緯があります。英国の正式名称は「the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」と言いますが、英国がかって7つの海を支配していて「great」であったわけではなく、単に島の名称だったわけです。

現代西欧文明の大きな流れを作ったイギリス人をアングロサクソン(Anglo-Saxon)と呼びますが、これはブリテン島に渡ったゲルマンの多くがアングル、サクソンだったからです。なかでもアングルは数の上で大きな勢力でした。England は「Engla land (アングルの土地)」から来たもので、English は「アングルの言葉」という意味でした。アングルがどんな言葉をしゃべっていたのか著者は知りませんが(現代に伝わる文献はおおむね8世紀以降のもののようです)、英語を意味するドイツ語も発音は英語の発音とほぼ同じですので(Google 翻訳で聞き比べてみました)、現在のドイツ語に近かったのではないかと思います。文字については、ゲルマンはルーン文字という直線を使った文字を使っていましたが(石に刻むのに便利)アングロサクソンはブリテン島に侵入した後、ローマ文化の影響を受けラテン文字(ローマ字)を使うようになりました。