英単語の最後の e は「お飾り」で発音しないことはよく知られています。e そのものは確かに「お飾り」で発音しませんが(house は「ホウゼ」ではなく「ハウス」です)、実は語全体の発音については重要な意味を伝えています。暫く前にコマーシャルで「OPEN HOUSE」を「オーペン ホウゼ」と最後のe を発音させたものがありました。勿論笑いをとるためのものです。

もし、ある単語が<母音字+子音字+e>で終わる場合いには、その母音字は「短母音」ではなく、「長い母音」(所謂「二重母音」を含む)で発音されるという信号を実は送っているのです。take, make, eye, owe, rose等は「二重母音」、tube, cubeは[u:]のように「長い母音」で発音されます。

それでは、なぜ name は「ナメ」ではなく「ネイム」とは発音されるようになったのかを歴史的に見てみます。
「name」の語源を英和辞書で調べると「古英語 nama(名前)」とでています。古英語の語末に現れる母音は発音され、且つ夫々意味を持っていました。即ち「2音節」の語であったわけです。しかし、初期中英語(1100−1300年)にかけて、語末の母音は次第に全て曖昧母音(現代の発音記号では e を逆さにしたもの)化して行き、対応する綴字も概ね「e」になっていきました。そして曖昧母音も発音されなくなっていきました。一方綴字の方は概ね「e」が保たれました(この意味で綴字は発音に比べて保守的です)。綴字は「name」で発音は[nam]だった訳ですが、この頃「開音節長化(開音節における短母音が長母音化する)」という音韻変化も起こっていました。簡単に図式化すると「ナム」⇒「ナーム」となったわけです。それが1400−1700年頃に生じたとされる大母音推移により「ナーム」⇒「ネーム」⇒「ネイム」となった経緯があるようです。

現代の日本語には「エイ、エイ、オウ」という掛け声等の例外を除いて「二重母音」がありません。そのため name は「ネーム」、take は「テーク」のように発音しがちです。make, eyeは日本語化した「メイク」「アイ」があるので「メイク」「アイ」と発音しますが強勢がないので、正しい英語の「二重母音」発音ではありません。owe も「オウ」ではなく「オー」と発音しがちです。roseも「ローズ」と発音しがちです。