直訳すれば、「好奇心は猫を殺した」となります。どういうことでしょうか。
西洋では、「猫は9つの命を持ち、なかなか死ない」という言い伝えがあります。英語では「Cats has nine lives.」という諺があります。そんな猫でさえ、あまりの好奇心によって、たとえば歩き回って狭い隙間に挟まったりして死んでしまうこともあるので、過剰な好奇心はほどほどにしなさい、という意味となりました。「根ほり葉ほり聞くな」というような場面で使われます。辞書では「好奇心は身を誤る」という訳語を与えているようです。
Don't ask about his divorce, curiosity killed the cat.(彼の離婚について、聞くなよ。好奇心は身のためにならない、というだろう。)

ところが、その語源を調べてみると、もともとはcuriosity ではなく、careが使われていたそうです。つまり、Care killed the cat.です。16世紀末の書物には、この表現が使われているそうで、このcareは、現在の「世話」という意味ではなく、「心配、悲しみ」という意味であったといいます(Care killed the cat.で「心配は身の毒」「気苦労は猫を殺す」の意)。ご存じのとおり、猫は好奇心の強い動物なので、いつのまにかcare がcuriosityに変わっていったと考えられています。

curiosityは、現在では「美徳」のように考えられますが、古くは4世紀に描かれた聖アウグスチヌス(古代キリスト教の神学者、哲学者、説教者)の『告白』に、"神は好奇心のために地獄を作った"とあり、その後もずっと、好奇心は悪徳であると非難され続けてきた背景もあるようです。

ちなみに、Curiosity killed the catの後に続く句は、satisfaction brought it back です。
好奇心は猫をも殺すが、そのぶん満足が返ってくる。そのリスクを冒す価値は十分ある、という意味になります。これに似た表現に「ファーストペンギン(first penguin)」があります。集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむ1羽のペンギンのこと。 転じて、その“勇敢なペンギン”のように、リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主を、米国では敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼びます。若い人々には「ファーストペンギン」になってもらいたいものです。