「社会人のための英語回路構築トレーニング自習帖」著者のブログ

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2019年07月

sometimes の s は昔の属格の名残り

sometimesを辞書で引くと「some+time+s(副詞語尾)」と出ています。更に「-s」を辞書で引くと「名詞の複数語尾」「動詞の三人称単数現在形語尾」「副詞形成語尾」とあります。

著者は何故かsometimes の s は some time のtimeの複数形でsomeとつながり1語になったものと思っていました。しかし、歴史的には、このs は複数とは何ら関係のないものでした。

昔の英語には主格、対格、属格、与格があったことは前に書きました。そして「-s」は単数の属格を表す語尾を表しました。属格は現代の所有格です。ですからsometimesは「ある時の」意味になるハズですが、古英語の属格には名詞を副詞化する働きもあり、「ある時に」の意味になりました。

always, nowadays, besides, else, once, twice も皆属格の名残です。最後の3つは s の綴字ではありませんが、発音は[s]です。

I go shopping Sundays. のSundaysも副詞です。

古英語の対格にも、同様に、名詞を副詞化する働きがありました。今日でもつぎのような名詞は副詞としても使えますが、この名残りだそうです。
It’s fine today.
Come this way.
They walked ten miles.
We are united to each other heart and soul.
What the hell is all this?(実は、著者はこのthe hellの扱いに悩んでいました。辞書では間投詞扱いのようです)

go home の home も元を辿れば名詞の対格に行きつくのだそうです。

今回述べたことは、単に「丸覚え」ではなく、理屈がサポートしてくれますので英語学習の抵抗感を薄めてくれるのに役立ちそうです。

なぜ debt, doubt の b は発音しないのか

前に次のように書きました。
ルネッサンス期(1300 – 1600年)になると、古典語への関心が高まり、イングランドの知識人たちはラテン語やギリシャ語にかぶれた言語生活を送っていました。特に16世紀後半だけでも、ラテン語の単語は12000語流入し、英語の語彙史において最も流入が著しかった時代でした。

この時代、語彙のみならず英文法書はラテン語を手本に書かれました。そして、ラテン語重視の流れは、綴字にも見られました。中英語期(1100−1500年)にフランス語を経由して英語に入ってきたラテン語は元々のラテン語の語源が崩れているものが多かったようです。ルネッサンス期の学者たちは学があり、元々のラテン語の原形を知っているだけに、この現象を「嘆かわしい」として、ラテン語の語源を参照して綴字を一方的に直していきました。しかし綴字を一方的に直しても庶民の発音までは直せませんでした。この現象の1例がdebt, doubt です。

debtの語源はラテン語のdebitum ですが、フランス語を経由して英語に入ってきた時には dette となっておりb の発音も消えていました。ですから発音は現在も[det]です。綴字の方は、おそらく語源にあるb を復活させてdebtの形になったものと推察します。doubtの語源はラテン語のdubitare ですが、おそらくdebtと同じ様な経緯を辿ったものと思います。

island も s がありながら発音されない不思議な単語の1つですが、こちらの方はジーニアス英和大辞典によれば「語源は古英語 igland(水に囲まれた土地)。古フランス語 isleの影響でislandに変形」とありますので、debt, doubt とは歴史的な事情は異なるようです。

なぜ name は「ナメ」ではなく「ネイム」とは発音されるのか

英単語の最後の e は「お飾り」で発音しないことはよく知られています。e そのものは確かに「お飾り」で発音しませんが(house は「ホウゼ」ではなく「ハウス」です)、実は語全体の発音については重要な意味を伝えています。暫く前にコマーシャルで「OPEN HOUSE」を「オーペン ホウゼ」と最後のe を発音させたものがありました。勿論笑いをとるためのものです。

もし、ある単語が<母音字+子音字+e>で終わる場合いには、その母音字は「短母音」ではなく、「長い母音」(所謂「二重母音」を含む)で発音されるという信号を実は送っているのです。take, make, eye, owe, rose等は「二重母音」、tube, cubeは[u:]のように「長い母音」で発音されます。

それでは、なぜ name は「ナメ」ではなく「ネイム」とは発音されるようになったのかを歴史的に見てみます。
「name」の語源を英和辞書で調べると「古英語 nama(名前)」とでています。古英語の語末に現れる母音は発音され、且つ夫々意味を持っていました。即ち「2音節」の語であったわけです。しかし、初期中英語(1100−1300年)にかけて、語末の母音は次第に全て曖昧母音(現代の発音記号では e を逆さにしたもの)化して行き、対応する綴字も概ね「e」になっていきました。そして曖昧母音も発音されなくなっていきました。一方綴字の方は概ね「e」が保たれました(この意味で綴字は発音に比べて保守的です)。綴字は「name」で発音は[nam]だった訳ですが、この頃「開音節長化(開音節における短母音が長母音化する)」という音韻変化も起こっていました。簡単に図式化すると「ナム」⇒「ナーム」となったわけです。それが1400−1700年頃に生じたとされる大母音推移により「ナーム」⇒「ネーム」⇒「ネイム」となった経緯があるようです。

現代の日本語には「エイ、エイ、オウ」という掛け声等の例外を除いて「二重母音」がありません。そのため name は「ネーム」、take は「テーク」のように発音しがちです。make, eyeは日本語化した「メイク」「アイ」があるので「メイク」「アイ」と発音しますが強勢がないので、正しい英語の「二重母音」発音ではありません。owe も「オウ」ではなく「オー」と発音しがちです。roseも「ローズ」と発音しがちです。

名前動後

前に次の様に書きました。
強勢の置かれる位置にも歴史があります。ゲルマン語系の単語は1音節が多いこともあって(1音節の単語であっても必ず強勢は置かれます。英語の大きな特徴の1つです)、2音節以上の単語でも、弱い接頭辞が付される場合を除いて、第1音節に強勢が置かれるのが原則でした。ところが1100年以降の中英語には後ろの方の音節に強勢を置こうとするフランス語やラテン語からの借用語が大量に流入するに及んで、ゲルマン語的なパターンは乱された結果、現代ではどの音節に強勢が置かれるかを類推するのは難しく、辞書で確認する以外ありません。「record」のように名詞と動詞で強勢の置かれる位置が異なるものも出てきました。著者は父親から「名前動後」(名詞の強勢は前、動詞の強勢は後ろ)と習いました。

この「名前動後」は受験英語の世界では今では次のように指導するようです。
名詞と動詞が同じ形で、2音節からなる語は、名詞として用いられる場合には前の音節に、動詞の場合には後ろの音節にそれぞれアクセントがあることが多いのです。これを「名前動後」と覚えておきましょう。

「名前動後と言われているもの」例:
accent (名前動前もあり)
addict
annex
combat
combine(動前もあり、名後もあり)
concert
contract
contrast(動前もあり)
convert
discard
discount(動前もあり)
discourse(動前もあり)
dismount(名後もあり)
export(動前もあり)
finance(名後もあり、動前もあり)
implant
import
misprint(名後もあり)
object
permit(名後もあり)
protest(動前もあり)
reject
research (名詞、動詞共前後あり)
transplant
transport
上記はジーニアス英和大辞典で著者がイギリス英語・アメリカ英語の発音だけをざーとチェックしたものです。カナダ、オーストラリア、ニュージランド、南ア等では異なるアクセントがあるかもしれません。上記をみただけで「名前動後」というルールがあるとは言えません。名詞と動詞は英語では発話される場所が異なるので、極端に言えばアクセントの置かれる場所が、文法的に、現実に問題になることは少ないでしょう。しかし、「名前動後」がどのようにして起ったかは知りたいところではあります。

英語は,初期中英語期(1100−1300年)に起こった屈折語尾の消失により,容易に品詞転換 (conversion) の可能な言語となりました。これは言語としては希有の現象であり,特に近代英語期(1500−1900年)以降,語を派生させるのにフル活用されてきました。現在の名詞と動詞で綴りが同じであることは辞書を小まめに引いていると大抵の動詞に名詞としての使い方があることが分かりますが、その原因がこれだったのかと分かります。それにしても両者のあいだでアクセントの位置に区別がつけられたのはどうしてでしょうか。その淵源は古英語,以前にあったようです。

前に書いたことと重複しますが、古英語の単語では原則として第1音節にアクセントが落ちたが,接頭辞による派生語では,その接頭辞が強形として使われているか弱形として使われているかによって,アクセントの位置が変わりました。接頭辞が強形として用いられている場合にはその接頭辞にアクセントが落ち,弱形として用いられている場合には語幹の第1音節にアクセントが落ちたのです。興味深いのは,派生名詞の接頭辞には強形が,派生動詞の接頭辞には弱形が,体系的に付加されている点です。「名前動後」のモデルの起源は,すでに古英語に存在したのです(Campbell, A. Old English Grammar. Oxford: OUP, 1959. 30—31)。

統計的に見れば、名詞と動詞が同じ綴字の2音節言語で一番多いパターンは「名前動前」で約7割強、「名後動後」は15%強、「名前動後」は11%強、「名後動前」は全くないようです。

この結果はどう見ればよいのでしょうか。
ゲルマン語系の単語は第1音節に強勢が置かれるのが原則だったので、現在の2音節語の大半が未だ第1音節に強勢が置かれている。ところが1100年以降の中英語には後ろの方の音節に強勢を置こうとするフランス語やラテン語からの借用語が大量に流入するに及んで、第2音節に強勢が置かれる単語が出現。屈折の衰退、品詞転換の拡大、ラテン語系の後ろから数えて何番目の音節に強勢を置くことが決まっているルールの採用等が複雑にからみあって「名前動後」の2音節語が増加中というのが1つの見方でしょうか。いずれにしても「名前動後と言われているもの」例で検証したように、強勢の置かれる位置は、英語の歴史を振り返れば、固定的なものではないということは事実のようです。

以上は1単語だけを取り上げた強勢の置かれる場所の議論の1部でしたが、そもそも「強勢」を置くということは、そこは明確に認識して欲しいという気持ちがあるからです。名詞、動詞、形容詞、副詞は明確に認識しても貰わないとコミュニケーションが成り立たないので常に強勢が置かれます。一方、代名詞、冠詞、前置詞、接続詞等は英語を母語とする人々には文脈から、そんなに注意を払わなくても支障がないため通例は強勢が置かれません。しかし、実際の会話では、そこは明確に認識して欲しいという気持ちがあれば代名詞、冠詞、前置詞でも強勢を置きますし、文脈から、そんなに注意を払わなくても支障がない場合は強勢が置かれません。次は Longman の First Things First からの例です。下線部のある単語のみに強勢が置かれています。
A: My husband likes steak, but he doesn’t like chicken.
B:To tell you the truth, Mrs Bird, I don’t like chicken, either.
皆さん、上記の下線部のないところは夫々1拍置いて発話せず、下線部のある所のみ強勢を置いて発話して見て下さい。不思議に通じますよね。

不定冠詞は何故子音の前では a なのか?

前に『a の語源は an(ひとつ)であり、その頃は子音の前であれ母音の前であれ全てanであった。歴史的にみれば数詞「an」から不定詞「a/an」の用法が分かれた。「ひとつ」という意味が弱まると同時に発音も軽く「アン」になり、数詞から不定冠詞に性格を変えた。その後、12世紀中頃、子音で始まる語の前では「n」が落ち a という形で使われるようになった。子音の前での an から a への変化は緩やかだったので「h」「w」「j」の音が使われる「house」「woman」「useful+名詞」などの前では長い間 an が使われた。1847年に発表された「ジェーン・エア」には an hospitalという例がある(「英語の歴史から考える 英文法の『なぜ』」)』と書きました。母音で始まる語の前で a ではなく an を用いるのは、英語は発音しにくい母音連続を嫌うからであるという説明は、一部真実ではありますが、歴史的に見れば誤りです。

それでは、なぜ「子音で始まる語の前ではnが落ち a という形」になったのでしょうか?
『英語の「なぜ」に答えるはじめての英語史(堀田隆一 研究社)』によれば、中英語(1100-1500年)以降、数詞としての one と不定冠詞 an の役割分担が明確に区別されるようになり、且つ、現在でもそうですが、oneは強勢が置かれる語である強形である一方an は強勢の置かれない弱形の語でした。即ち、数詞としての one と不定冠詞 anは、音的にも意味的にも明確に区別されるようになったということです。弱形化した an は次の語とくっつけて恰も1語のように発話されます。次の語が母音で始まる場合には n があった方が発話し易いので母音の前のan は今日まで生き延びたということだと思います。英語は発音しにくい母音連続を嫌うということは音韻研究で証明されているようです。逆に子音連続も発音しにくいので、恰も1語のように発話するのには不便であったため次第に「子音で始まる語の前ではnが落ち a という形」になったと思われます。一言で言えば、歴史的にはa の語源は an(ひとつ)であり、その頃は子音の前であれ母音の前であれ全てanであったがanは不定詞としての役割に限定され、且つ弱形で発音されたことが相俟って、今日の姿になったということです。
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