「スケール」と「scale」

日本語の「スケール」は英語の “scale” と同じ使い方で「秤」「物差し」「縮尺」「規模・程度・度合い・スケール」の意で使われる。“scale” は、元々は「はしご、階段」を意味した。「はしご、階段」の一段一段の分かれ目のイメージが「目盛り」に発展したことは容易に推察できる。

「スケール」は専門用語として「(ボイラー・水道などの内側にできる)湯あか」「(冶金)熱した金属の表面にできる酸化物皮膜」の意でも使われる。

「スケールの大きな事業」には “a large-scale project” という言い方で “scale” が使えるが「スケールの大きな人」の場合には使えない。「規模の大きな事業」とは言えても「規模の大きな人」はおかしな日本語になる。

そこで「スケールの大きな人」を英語で何というのだろうかと和英を引いてみた。「スケールの大きな人(=度量の広い人)」→ a person of high caliber。しかし “caliber” のコアのイメージは「質(quality)」であるから “a person of high caliber” は「質の高い人」のイメージであり、日本語の「スケールの大きな人」との間には著者は「意味のずれ」を感じる。

この同じ和英で「度量」を引いてみると「度量の大きい=broad-minded」「度量の狭い=narrow-minded」で “caliber” は使われていない。

ここからは著者の独断と偏見であるが、日本人が「スケールの大きな人」という場合に持つイメージにピッタリの英語はないのではないか。その背景は英語を母語とする世界では人物を評価するのに、(断定は禁物だが)そのような「物差し」を持っていないからだと推定できる。

「スケールの大きな人」に一番近い他の日本語は、著者は「器の大きな人」だと考える。「器」を広辞苑で調べてみると「事を担当するに足る才能。器量。また、人物の大きさ」とある。「スケールの大きな人」という場合、通例この最後の意味で使っているものと考える。

「スケールの大きな人」にピッタリの英語はないので「規模」を表す “scale” を借りてきて、それを「人」にも当てはめて「スケールの大きな人」という表現が作られたのではないだろうか。