「社会人のための英語回路構築トレーニング自習帖」著者のブログ

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コラム

It seems to me that … というのは何故か?

(10)It seems to me that … というのは何故か?

この「it」が形式主語と言われるのはよく知られています。この「it」も(9)で書いたように非人称動詞にかかわって成立したものです。

中期英語の頃は、今の英語で言えば「me seems that thou need not care」(あなたは心配するに及ばぬと私には思える)と「it」は使われていませんでした。「that」以下が主語であることが分かるために「it」は必要なかったのです。しかし(9)で書いたように主語がないと不安定に感じられるようになり「it」が使われるようになりました。It seems to me that …の「to me」に「与格」の名残を感じることができます。

「It seems to me that …」構文が定着したもう1つの理由はthat以下が通例長いので it を最初に主語として持ってくることにより極めて落ち着いたスタイルの文になったこともあるでしょう。

It rains. というのは何故か?

(9)It rains. というのは何故か?

ある英和辞書によると、「it」は「英語では主語を立てる必要があるため天候、気温、時間、距離などを漠然とさす」のに使われます。

「雨が降る」を文字通り訳すなら「The rain falls.」ですね。しかし「rain」には「雨が降る」の意の動詞としての役割がありますから、「rains」とか「rained」だけでもよさそうなものです。「snow(雪が降る)」「blow(風が吹く)」「thunder(雷が鳴る)」等も論理的主語を必要としない動詞です。古英語ではこのような動詞が40ほどあったようです(このような動詞は「非人称動詞」と呼ばれます)。そして、実際、主語なしで使われていました。「英語の歴史から考える 英文法の『なぜ』」(朝尾幸次郎 大修館書店)によると、現代英語snow の古英語は sniwan で、この3人称単数過去は snideです。「雪が降った」は「Snide.」だけでよかったようです。

しかし、文が動詞で始まる言い方は疑問文と紛らわしいし(現代でもイギリス英語では「Have you any shoes like these?」のように文が動詞で始まる言い方が残っています)、与格と対格が統合され、更に名詞の主格と目的格が実質消滅し、そのかわりに語順の意識が高まると非人称動詞に主語が現れないと不安定に感じられるようになりました。そこで、主語にあいまいな状況で使用される it が主語として採用されたようです。玄関をノックしたら「Who is it?」という返答が返ってきますが、この「it」は何かを説明するのはなかなか難しいですね。あいまいな状況にはもってこいの代名詞です。その「it」を主語に立てることで文は安定したものになり、非人称動詞に主語「it」を立てることが定着しました。

「It is rainy.」は「The weather is rainy.」とも言えますが、同じ主語を使って「The weather rains.」とは言えません。これには上記のような背景があるからです。

なお,現代英語にも,形式上の主語を欠いた非人称構文として化石的に残っている表現がいくつかあります。
・ The opening hours are as follows:(主語の数・時制とは関係なく常に「as follows」の形で使われます)
・ As regards the point you've just made,
・ I will act as seems best.
・ Methinks you're changed so much.(methinksは「私には・・・と思われる」の意)
全て「3人称単数・現在形」で使われているところに非人称動詞扱いの名残を見ることができます。

please / if you please / if you would please

(8)please / if you please / if you would please

「どうぞ、よろしければ」は「please」、丁寧に言えば「if you please」、更に丁寧に言うならば「if you would please」ですが、「あなたが好むならば」「あなたがしたいと思うならば」の意と解すると(pleaseを自動詞として捉える)、何を好むのか、何がしたいのか明白ではありません。英語では通例このような曖昧な表現を好みません。

「if you please」は実は「if it pleases you」(もしそれがあなたを喜ばすならば)であったものが「you」が前に来て「if you please」になった経緯があります。

この「please」はラテン語が語源ですが古フランス語になり英語に入ったという経緯があります。フランス語で「どうぞ」は「s’il vous plait」と言いますが、英語に置き換えると「if it pleases you」です。「please」は、元来、「・・・にとって気にいる」という意味で与格を従え、主語のない形で使われた動詞でした。「if you please」の「you」は元来「与格」であったのに「主語+動詞+目的語」の語順が定着すると「you」が恰も主語のように思われるようになったのです。

私は彼の宿題を手伝った

(7)私は彼の宿題を手伝った

「を手伝う」は「help」ですから「I helped his homework.」としてしまうかもしれませんが、これは不可です。何故ならば「help」は「to give assistance or support to …」(・・・に援助・支援を与える)の意だからです(Merriam Webster’s Collegiate Dictionary)。「help」の目的語は「人」でなくてはならないのです。「I helped him to do his homework.」

昔は「主格」「対格」「属格」「与格」とあったものが、簡易化が進んで「対格」と「与格」は統合され「目的格」になったため、現在ではこの「与格」(・・・に)が見えにくくなっていますが、上記の「help」の使い方はその名残というか面影です。

「listen」も現在は通例「I listened to the radio.」のように自動詞で使いますが、古い使い方としては「・・・に傾聴する、・・・を聞く」の意の他動詞としての使い方もあります。これも「与格」(・・・に)の存在を思い起こさせる例です。

日本語では「新入社員の業務をフォローする」という言い方をしますが、「Please follow me.」は「どうぞ私について来てください」の意になるように、「follow」は「・・・について行く」の意です(「私をフォローして下さい」ではありません)。ですから「follow」は、昔は「与格」(・・・に)を従えていました。

日本独特の英文法の教え方に「5文型」がありますが、第4文型の「SVOO」の最初の「O」は「・・・に」当る語を持ってきて、次の「O」は「・・・を」持ってきます。「対格」と「与格」は統合され「目的格」になったため、こういうルールを決めておかないと混乱する理由からこうなったのだと思います。「SVOO」文型が可能な動詞には「give, show, offer, hand, pass, send, teach, tell, pay, lend, do, buy, get, find, make, cook, choose, leave, play, sing」等がありますが、昔は「対格」「与格」の形が異なっていたので、多分今のように語順は厳しくなかったのではないかと想像しています。現在の英語では第4文型の目的語に「・・・を」持ってきた場合には「・・・に」当る語の前に「to」又は「for」が必要です(「for」が必要なのは上記の例ではbuy以下)。

なぜ単数にも複数にも同じ「you」が使われるのか?

(6)なぜ単数にも複数にも同じ「you」が使われるのか?

昔は「主格」「対格」「属格」「与格」とあったのが、簡易化が進んで「対格」と「与格」は統合され「目的格」になり、「属格」はその機能を縮めて「所有格」になりました。そして名詞の「主格」と「目的格」は同じ形になり、実質「主格」と「目的格」を合わせた「基本形」と「所有格」の2つに簡略化されてしまいました。

代名詞は名詞とは異なって、昔の名残を引きずって「主格」「所有格」「目的格」の形が異なります。その代名詞は単数と複数で形を変えていますが、「you」だけが単複同形です。「私たち」は「we」、「彼ら」「彼女ら」「それら」は「they」で「he, she, it」と区別しているのに「あなた」も「あなた達」も「you」です。

実は「あなた」と「あなた達」は昔は形が違いました。「thou/thy/thee」(単数)、「thou」の複数形「ye」は現在も生き伸びていて聖書では見かけることがあります。
Thou shall not kill.(汝殺すなかれ)
Ye are the salt of the earth.(汝らは地の塩なり)

3世紀後半、御存じのように、ローマ帝国は広大な領土を統治するために複数の皇帝を置くようになりました。このため皇帝はラテン語で「私は」という時「私たちは」という言い方をしました。人々も皇帝に対して「あなたがたは」という言い方をしました。ここから2人称単数に対し、敬意の意味で2人称代名詞複数を使うようになりました。このならわしがフランス語に入り、さらにヨーロッパ諸語に広まりました。更に意味は敬意から親疎による使い分けになりました。御存じのようにフランス語には「あなた」という2人称代名詞に「tu」と「vous」があります(前者が親しみを込めた使い方)。この習わしは英語にも入り、親しい間柄では「thou」、改まった場面では複数の「ye」という使い方がされました。その後色々変遷があり、親疎に拘わらず単数にも複数にも同じ「you」が使われるようになりました。これが単数にも複数にも同じ「you」が使われるようになった背景です。
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