「社会人のための英語回路構築トレーニング自習帖」著者のブログ

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コラム

話の道筋に道標をー分かり易い文章にするために

日本語から英語への機械翻訳の精度が上がってきました。ザックリいうと「分かり易い日本語さえ入力すれば、正しく翻訳」してくれます。

(1)文と文をつなぐ言葉がない例(「理科系のための英文作法(杉原厚吉 中公新書)」より)
コンピュータはあらかじめ決められたプログラムにしたがって機械的に計算する。そろばんは人が動かさなければならない。その動かし方は機械的で誰がやっても同じである。コンピュータはそろばんよりはるかに計算が速い。コンピュータとそろばんは本質的に異なるものである。

The computer calculates mechanically according to a predetermined program. The abacus has to be moved by a person. The abacus has to be moved by a human being and the way it is moved is the same for everyone. The computer is much faster than the abacus. The computer and the abacus are fundamentally different.(DeepL翻訳)

日英両方とも1つ1つの文の意味はよく分かります。しかしながら、文と文をつなぐ言葉がないので「何を言いたいのか」分かり難い構成になっています。

(2)上記に文と文をつなぐ言葉を加えた例:筆者が下線部を付け加えてみました。
コンピュータはあらかじめ決められたプログラムにしたがって機械的に計算する。一方、そろばんは人が動かさなければならない。その動かし方は機械的で誰がやっても同じであるけれども、コンピュータはそろばんよりはるかに計算が速い。したがって、コンピュータとそろばんは本質的に異なるものである。

The computer calculates mechanically according to a predetermined program. The abacus, on the other hand, has to be moved by a person. The abacus is moved mechanically, which is the same for everyone, but the computer is much faster than the abacus. Therefore, the computer and the abacus are fundamentally different.(DeepL翻訳)

DeepLは「on the other hand」を挿入句として処理していますが、我々日本人には最初に持って来た方が分かり易いでしょう。
The computer calculates mechanically according to a predetermined program. On the other hand, the computer calculates mechanically according to a predetermined program. The abacus, has to be moved by a person. The abacus is moved mechanically, which is the same for everyone, but the computer is much faster than the abacus. Therefore, the computer and the abacus are fundamentally different.

(1) と(2)とを比べてみると(2)の方が分かり易いと思います。「on the other hand」「but」「therefore」の3つを加えただけで、こんなに分かりやすさが変ってきます。

日本語でも、相手が分かり易い文のつながりになるような工夫をしていけば、その工夫は英語でも生かされるでしょう。是非、普段から心がけて下さい。

I gave a boy the book.

「理科系のための英文作法」(杉原厚吉 中公新書)で取り上げられている言語材料です。

我々が学校で習った英文法では、この文は5文型の1つである(SVOO)に当てはまっており、「私は1人の少年にその本をあげた」となり全く問題ないように見えます。

しかし、この文は英米人にとっては「不自然」に感じるらしい。I gave a boy the book. はI gave the book to a boy.と書き直せることも習った。こちらの方は英米人も極めて自然に感じるらしい。

「I gave the book to a boy.」は、英文法の本には書いてないが、『原則として、前置詞の前で、それまで送られて来た絵(イメージ)は一旦止まる』ので、この文は「私はその本をあげた、(あげたのは)1人の少年に」の絵(イメージ)を送ることになります。

一方、「I gave a boy the book.」の方は、前置詞がないので「私は1人の少年にあげた、その本を」となります。この場合「the book」は定冠詞 the が付いているので聞く側にとっては「古い情報(既知)」です。これに比べて「a boy」は聞く側にとっては、この場面(文脈)では「新しい情報(新規)」です。

久野瞕ハーバード大学名誉教授(言語学者)によれば「文中の語順は、古いインフォメーションを表す要素から、新しいインフォメーションを表す要素へと進むのを原則とする」。この原則に照らせば「I gave a boy the book.」は「不可」ということになります。

それでは、上記の英文が「a boy」が「the boy」ならどうでしょうか?
「人(the boy)」と「物(the book)」を比べたら「人(the boy)」が優先されるので
I gave the boy the book.または
I gave the book to the boy.(本の方により関心がある場合)

「give」と同じように「SVOO」文型が可能な「ask」でも「ask someone something」で使われ「ask something to someone」は不可と辞書に書いてあります。これは「ask」という動詞の持つ「イメージ」との関係で「人」が優先されるからです。「I’ll ask a question to you.」と聞いたら、聞かれた方は「冷たい」扱いを受けたと感じると英語ネイテイヴから聞いたことを思い出しました」。

「文中の語順は、古いインフォメーションを表す要素から、新しいインフォメーションを表す要素へと進むのを原則とする」を「英文法」とするには、余りにも例外が多いかも知れませんので注意して欲しいのですが、「古いインフォメーションを表す要素から、新しいインフォメーションを表す要素へと進むと相手が分かり易い英文になる」とは言えそうです。

「足を引っ張る」を英語で何というか

日本語の「足を引っ張る」は次の意味で使われます。
1. 他人の成功や物事の進行を、意図的に妨害する。
2. ある行為がきっかけで物事の進行を阻害してしまう。

ここでは前者の意味で使います。

「足を引っ張る」を英語に直訳すれば「pull one’s leg」です。確かに人の脚を引っ張れば前進出来ません。文脈さえキチンとしていれば、これでも通じるでしょう。しかし、「pull one’s leg」は元々、棒か何かで人の足を引っかけたことに由来し「からかう」「だます」の意でも使われます。

英辞郎では「drag down」と訳していますが、「drag someone down」だと「down」がある分「引きずりおろす」イメージになりますので、日本語の「足を引っ張る」と少しニュアンスが違います。

「他人の成功や物事の進行を、意図的に妨害する」を DeepL 翻訳にかけてみると「deliberately interferes with the success of others or the progress of things」です。「妨害する」に対応する英語には他に「block」「obstruct」「interrupt」「disturb」等があります。work against でも通じるでしょうが「足を引っ張る」ほどの「陰湿さ」は感じません。

著者が愛用している「日米口語辞典」(朝日出版社)では「try to get in someone’s way」を推奨しています。「通せんぼ」です。それでも「足を引っ張る」ほどの「陰湿さ」は出ていません。文化的背景のある語句の翻訳は、何かしらの不満が残ります。

Black Lives Matter

テニスの4大大会の1つである全米オープンは日本時間13日に、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで女子シングルス決勝があり、第4シードで世界ランキング9位の大坂なおみ(22)=日清食品=が、全豪オープンで2度の優勝経験がある同27位のビクトリア・アザレンカ(31)=ベラルーシ=を1―6、6―3、6―3で降し、2年ぶり2回目の優勝を果たした。
 テニスを通して人種差別に抗議してきた大坂にとって、今大会は一試合一試合が特別な重みを持っていた。1回戦から試合の入場時などに差別による黒人被害者の名前を入れた黒色のマスクを着け、人種差別撤廃へのメッセージを発信した。全米オープンは優勝するには7回勝たなければならない。だから彼女は7枚の異なるマスクを用意した。用意しただけでなく、1枚も無駄にすることなく優勝してしまった。脱帽!!

「差別への問題意識を世界中の人に伝えたかった。被害者がどういう人なのかを知ってもらえれば、もっと関心が広がるかもしれない」。優勝直後のインタビューでも、「私のマスクを見て、(人種差別問題について)いろいろな人が話題にしてくれれば(talk about)、うれしい」と語った。

アメリカでは白人警官が黒人男性の首を圧迫して殺したのを契機に「Black Lives Matter」運動が盛り上がっている。

このスローガンは英語としても格好の言語材料だ。
(1)「black」には「黒い」という意味の形容詞と、「黒」「黒人」という意味の名詞の使い方ができる。
(2)「lives」は「live」という動詞の3人称単数形と、「life」という意味の名詞の複数形も両方に解釈可能。
(3)「matter」は「事」という意味の名詞と、「重要である」という意味の動詞の両方で解釈可能。後者は「It doesn’t matter.(氣にしなくてよい、どれでもよい)」の形でよく使われます。

ここでは「lives」を動詞として捉えると「黒は事を生活で実行する」と相当想像をたくましくしないと何をいいたいのか分かりません。「life」という意味の名詞の複数形と理解すれば、可算名詞ですから「一生」「人命」の意になります。

正解の組み合せは「黒人の人命(たち)は重要である」です。

「ソーシャル・デイスタンス」は誤用である

殆どのマスコミ報道は、コロナ関連記事で、「ソーシャル・デイスタンシング」を使うことなく「ソーシャル・デイスタンス」を使っています。

「social distance(社会的距離)」という言葉は存在します。しかし英和辞書を引けば分かりますが「集団・個人の近親度を示す」言葉ですので、現在の日本での使われ方は歴とした「大誤用」です。著者がチェックした限りアメリカでは「social distancing」が使われています。AFPBBというフランス通信社の記事を日本語で流している会社の翻訳でも「ソーシャル・デイスタンシング(個人と個人の距離を保つこと)」と「ソーシャル・デイスタンシング」を使っています。

誰が使い始めたのかは知りませんが、皆が「右に倣え」とばかり雪崩を打って誤用がすっかり定着してしまいました。

面白いことに、どこかの週刊誌か何かのオンライン版に「日本は韓国との間にソーシャル・デイスタンスを取るべきだ」という記事が出ていました。誤用の誤用で大正解です。

「誤用」で思い出しました。

昔、高校の社会科の教科書には必ず「TVA(Tennessee Valley Authority)」が取り上げられていました。TVA(Tennessee Valley Authority)は、1933年に、アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが、世界恐慌の対策として実施したニューディール政策の一環として、テネシー川流域の総合開発を目的として作られたアメリカ政府の機関です。当時「テネシー渓谷開発公社」と訳されていました。筆者はテネシーに赴任した時、どんな渓谷だろうかと楽しみに川下りをしましたが、どこにも渓谷らしきものを目にすることはありませんでした。これは「valley」を「渓谷」と最初に訳した人がおり、その誤訳が長い間踏襲されようですが、どこかで氣がついた辞書編纂者が「テネシー川流域開発公社」と訂正し、今日に至っています。

「oak」を「樫」と訳したのも罪作りです。「樫」は確かに「oak」の一種ですが全てではありません。「樫」は堅過ぎてオーク材にならなくて、日本は専ら輸入に頼っていました。オーク材は「ブナ」を原材料としています。「ブナ」なら北海道で上質なものが採れます。ワザワザ高いオークをイギリスから輸入していたのです。
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