最終回は宗教的な背景が分からないと意味が分かりませんので最初から解説をつけます。
ベンがひげもそらず、本当に疲れた顔をしてハイウエイを運転してきますが、SANTA BARBARAへ行く道に差し掛かったところで高速を降り、ガソリン・スタンドに飛び込みます。時刻は午後2時5分です。ベンが係員に話しかけます。
(Ben) Do you have a phone?
係員が黙って公衆電話を指差します。ベンは電話器の下にぶら下がっている電話帳に手を伸ばします。電話帳を繰っていましたが「Smith, Carl W., M.D.」のところで手が止まります。ベンは10セント硬貨を入れます。
(女性の声) 657-2036
(Ben) Hello - who is this?
(女性の声) This is Dr. Smith's answering service.:「answering service」は「留守番電話取り次ぎ業」。
(Ben) Is the doctor anywhere?
(女性の声) Well - you see - the doctor is at his son's wedding, but I'm sure it's over by now. :「by now」は「今頃は」の意の成句で頻繁に使われます。是非覚えて欲しい成句の1つです。
He should be checking in any moment -:「should」は「shall」の過去形ですから仮定法。「もし神が存在するなら神の意思で・・・だろう」⇒「多分・・・のハズだ」。「彼は今にも戻ってきたことを連絡してくると思いますよ」。
(Ben) Listen to me. I am Dr. Smith's brother - Reverend Smith - and I am supposed to perform the ceremony. :「Reverend Smith」は「スミス牧師」の意になります。
I just got in - from - Portland - and I've forgotten what church – you see?
ガソリン・スタンドの係員が読んでいた雑誌を置いて、疑わしそうにベンをじーと眺める。
(女性の声) Oh. Well - I'm not sure - but you might try the First Presbyterian.:「you might」は「・・・して下さい」の丁寧な言い方。「Presbyterian」は「長老派教会」と訳されているプロテスタントの1宗派。
That's on Allan Street.
(Ben) Thank you.
(女性の声) I certainly hope you -
ベンは電話を切って、係員の方に向きます。
(Ben) Allan Street. Where is it?
(係り員) Six blocks up - three blocks over.:「over」は「↷」のイメージです。「北へ6ブロックー3ブロック戻る」。
ベンは車に乗ります。
(係り員) You need any gas, Father?:「Father」は「神父」でカトリックです:
(Ben) I'm not a priest - I'm a minister.「私は司祭ではありませんー牧師です」
ベンの車がUターンするために交差点の中で止まります。ガス欠になりますが、かろうじてUターンし、敷石のところまでゆっくり行き、そこで止まります。ベンは大慌てで車を降り、ドアを開けたまま通りを走って下って行きます。見上げると通りの反対側に捜している教会を見つけます。ベンはAllan Streetに出て尚も走って行くと、通りの反対側に目指す教会を見つけます。通りを横切っていくと教会の前に何台かの車が駐車していますが、その中にMrs. Robinson の車を見つけます。時刻は午後2時15分。ベンは入り口を開けようとしますが閉まっていて開きません。ガラス越しには教会の前の方で式が行われているのが見えます。ベンは教会の横に回ります。入り口を探し、中に入ります。ガラスの窓から下が見下ろせるバルコニーがあります。階段を上がってベンが見下ろすと、牧師が本を閉じ、何か言うとCarl Smith がキスしようとします。:映画ではキス直前で次の大騒動が起ります。
(Ben) Oh, Jesus - God - no -
ベンはガラスに手をつきうなだれる。オルガンの音が鳴り響きます。ベンは背筋を伸ばして言います。
No!:ここはプロテスタントの結婚式のしきたりを知らないと理解できません。以下はネットからの転載。
『式の最も重要な部分は、神と証人との前での誓約です。牧師は式辞の中で、次のように言います。
「---- そこで、出席の皆さんのうち、この結婚に正当な理由で異議のある方は、今ここで、それを申し出てください。今、申し出がなければ、後日、異議を申し立て、二人の平和を破ってはなりません。
次に、あなたがた二人に申し上げます。人の心を探り知られる神の御前に、静かに省み、この結婚が神の律法にかなわないことを思い起こすなら、今ここで言い表してください。神のことばに背いた結婚は、神が合わせられるものではないからです。」』
ベンはガラスの中央部に来てガラスをドンドン叩き始めます。
Elaine - Elaine!
参列者は皆、見上げます。
ベンは窓を叩いて叫んでいますが参列者には聞こえません。
Mrs. Robinson は勝ち誇ったような微笑みをします。
Mr. Robinsonがベンを見ます。
Carl もベンを見ます。
エレインはベンを見上げて通路をベンの方に向かって行きます。驚愕しています。Mr. Robinson、Carl、Mrs. Robinsonがエレインの方に動きます。オルガンは鳴り響いています。今や、エレインの名を呼ぶベンの声が聞こえます。
(Carl) Who is that guy? What's he doing?
(Mr. Robinson) I'll take care of him.
(Mrs. Robinson) He's too late.:異議申し立てが間に合わなかったということです。形式的には異議申し立ては式の最初に行われるハズですから「too late」です。
他の参加者は皆困惑して何かしゃべっています。
エレインが叫びます。
(Elaine) Ben!
ベンは階段を下りてエレインを連れて逃げようとします。ベンはエレインの手を取って、ドアの方に動きます。
(Ben) Come on - don't faint.
牧師の身なりをした男が入り口をガードしています。
(Ben) Out of my way!
ここからベンはMr. Robinson、Carl と大立ち回りします。ベンは金の十字架をCarlに振り回します。Carl は他の客の方に退避せざるを得ません。
場面が変わって、Mrs. Robinsonがエレインの所に行って彼女の手首を取ります。
(Mrs. Robinson) Elaine - it's too late.
エレインは手を振り払います。
(Elaine) Not for me.:ここでは「私にはtoo lateではない」の意。
場面が変わって、ベンはドアの前に立ちふさがっている男に金の十字架を振りあげます。:この場合の十字架は武器だけの意味しかないわけではありません。「この紋所が見えぬか!」と神の権威を振りかざしているわけです。
(Ben) MOVE!
男はドアから離れます。エレインが入り口を開け、ベンと共に外に出ます。
(Ben) Run, Elaine, run!
2人は歩道を走って逃げます。ドアが閉まりかけたバスに飛び乗ります。
(Ben) How much?
(運転手) Where do you want to go?
(Ben) To the end.
2人は後部座席に腰掛けます。皆振返ります。それもそのはず、エレインは花嫁姿で、ベンは上着が乱闘で半分破けているのですから。
(Ben) Let's go. Let's get this bus moving!
運転手は車を出します。
(Elaine) Benjamin?
(Ben) What?
エレインがベンの手を取る。:映画のエンデイングはバスの中の2人の表情を追っていくものだったと記憶しています。最初は2人で後部座席の窓から後ろを見てにこやかに笑っていましたが、正面を向いた2人は決して微笑んではいません。見る人それぞれに余韻を残したものでした。
以上で本シリーズは終了します。
この映画は1969年にアメリカから帰国の途中にどこか田舎の映画館で見たもので、当時「分かった」と思ったものでしたが、今回解説してみて本当には「よく分かっていなかった」ことが分かりました。言葉の裏には「文化」「習慣」等色々なものがあることを改めて知らされた1カ月間でした。
ベンがひげもそらず、本当に疲れた顔をしてハイウエイを運転してきますが、SANTA BARBARAへ行く道に差し掛かったところで高速を降り、ガソリン・スタンドに飛び込みます。時刻は午後2時5分です。ベンが係員に話しかけます。
(Ben) Do you have a phone?
係員が黙って公衆電話を指差します。ベンは電話器の下にぶら下がっている電話帳に手を伸ばします。電話帳を繰っていましたが「Smith, Carl W., M.D.」のところで手が止まります。ベンは10セント硬貨を入れます。
(女性の声) 657-2036
(Ben) Hello - who is this?
(女性の声) This is Dr. Smith's answering service.:「answering service」は「留守番電話取り次ぎ業」。
(Ben) Is the doctor anywhere?
(女性の声) Well - you see - the doctor is at his son's wedding, but I'm sure it's over by now. :「by now」は「今頃は」の意の成句で頻繁に使われます。是非覚えて欲しい成句の1つです。
He should be checking in any moment -:「should」は「shall」の過去形ですから仮定法。「もし神が存在するなら神の意思で・・・だろう」⇒「多分・・・のハズだ」。「彼は今にも戻ってきたことを連絡してくると思いますよ」。
(Ben) Listen to me. I am Dr. Smith's brother - Reverend Smith - and I am supposed to perform the ceremony. :「Reverend Smith」は「スミス牧師」の意になります。
I just got in - from - Portland - and I've forgotten what church – you see?
ガソリン・スタンドの係員が読んでいた雑誌を置いて、疑わしそうにベンをじーと眺める。
(女性の声) Oh. Well - I'm not sure - but you might try the First Presbyterian.:「you might」は「・・・して下さい」の丁寧な言い方。「Presbyterian」は「長老派教会」と訳されているプロテスタントの1宗派。
That's on Allan Street.
(Ben) Thank you.
(女性の声) I certainly hope you -
ベンは電話を切って、係員の方に向きます。
(Ben) Allan Street. Where is it?
(係り員) Six blocks up - three blocks over.:「over」は「↷」のイメージです。「北へ6ブロックー3ブロック戻る」。
ベンは車に乗ります。
(係り員) You need any gas, Father?:「Father」は「神父」でカトリックです:
(Ben) I'm not a priest - I'm a minister.「私は司祭ではありませんー牧師です」
ベンの車がUターンするために交差点の中で止まります。ガス欠になりますが、かろうじてUターンし、敷石のところまでゆっくり行き、そこで止まります。ベンは大慌てで車を降り、ドアを開けたまま通りを走って下って行きます。見上げると通りの反対側に捜している教会を見つけます。ベンはAllan Streetに出て尚も走って行くと、通りの反対側に目指す教会を見つけます。通りを横切っていくと教会の前に何台かの車が駐車していますが、その中にMrs. Robinson の車を見つけます。時刻は午後2時15分。ベンは入り口を開けようとしますが閉まっていて開きません。ガラス越しには教会の前の方で式が行われているのが見えます。ベンは教会の横に回ります。入り口を探し、中に入ります。ガラスの窓から下が見下ろせるバルコニーがあります。階段を上がってベンが見下ろすと、牧師が本を閉じ、何か言うとCarl Smith がキスしようとします。:映画ではキス直前で次の大騒動が起ります。
(Ben) Oh, Jesus - God - no -
ベンはガラスに手をつきうなだれる。オルガンの音が鳴り響きます。ベンは背筋を伸ばして言います。
No!:ここはプロテスタントの結婚式のしきたりを知らないと理解できません。以下はネットからの転載。
『式の最も重要な部分は、神と証人との前での誓約です。牧師は式辞の中で、次のように言います。
「---- そこで、出席の皆さんのうち、この結婚に正当な理由で異議のある方は、今ここで、それを申し出てください。今、申し出がなければ、後日、異議を申し立て、二人の平和を破ってはなりません。
次に、あなたがた二人に申し上げます。人の心を探り知られる神の御前に、静かに省み、この結婚が神の律法にかなわないことを思い起こすなら、今ここで言い表してください。神のことばに背いた結婚は、神が合わせられるものではないからです。」』
ベンはガラスの中央部に来てガラスをドンドン叩き始めます。
Elaine - Elaine!
参列者は皆、見上げます。
ベンは窓を叩いて叫んでいますが参列者には聞こえません。
Mrs. Robinson は勝ち誇ったような微笑みをします。
Mr. Robinsonがベンを見ます。
Carl もベンを見ます。
エレインはベンを見上げて通路をベンの方に向かって行きます。驚愕しています。Mr. Robinson、Carl、Mrs. Robinsonがエレインの方に動きます。オルガンは鳴り響いています。今や、エレインの名を呼ぶベンの声が聞こえます。
(Carl) Who is that guy? What's he doing?
(Mr. Robinson) I'll take care of him.
(Mrs. Robinson) He's too late.:異議申し立てが間に合わなかったということです。形式的には異議申し立ては式の最初に行われるハズですから「too late」です。
他の参加者は皆困惑して何かしゃべっています。
エレインが叫びます。
(Elaine) Ben!
ベンは階段を下りてエレインを連れて逃げようとします。ベンはエレインの手を取って、ドアの方に動きます。
(Ben) Come on - don't faint.
牧師の身なりをした男が入り口をガードしています。
(Ben) Out of my way!
ここからベンはMr. Robinson、Carl と大立ち回りします。ベンは金の十字架をCarlに振り回します。Carl は他の客の方に退避せざるを得ません。
場面が変わって、Mrs. Robinsonがエレインの所に行って彼女の手首を取ります。
(Mrs. Robinson) Elaine - it's too late.
エレインは手を振り払います。
(Elaine) Not for me.:ここでは「私にはtoo lateではない」の意。
場面が変わって、ベンはドアの前に立ちふさがっている男に金の十字架を振りあげます。:この場合の十字架は武器だけの意味しかないわけではありません。「この紋所が見えぬか!」と神の権威を振りかざしているわけです。
(Ben) MOVE!
男はドアから離れます。エレインが入り口を開け、ベンと共に外に出ます。
(Ben) Run, Elaine, run!
2人は歩道を走って逃げます。ドアが閉まりかけたバスに飛び乗ります。
(Ben) How much?
(運転手) Where do you want to go?
(Ben) To the end.
2人は後部座席に腰掛けます。皆振返ります。それもそのはず、エレインは花嫁姿で、ベンは上着が乱闘で半分破けているのですから。
(Ben) Let's go. Let's get this bus moving!
運転手は車を出します。
(Elaine) Benjamin?
(Ben) What?
エレインがベンの手を取る。:映画のエンデイングはバスの中の2人の表情を追っていくものだったと記憶しています。最初は2人で後部座席の窓から後ろを見てにこやかに笑っていましたが、正面を向いた2人は決して微笑んではいません。見る人それぞれに余韻を残したものでした。
以上で本シリーズは終了します。
この映画は1969年にアメリカから帰国の途中にどこか田舎の映画館で見たもので、当時「分かった」と思ったものでしたが、今回解説してみて本当には「よく分かっていなかった」ことが分かりました。言葉の裏には「文化」「習慣」等色々なものがあることを改めて知らされた1カ月間でした。